外国人比率1.5%、特殊な移民政策を掲げるハンガリーの首都ブダペストに行ってきた。

2016年12月29日      2016年12月31日
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ハンガリーに行きたかった最大の理由は外国人比率の低さを肌で感じること。そしてヨーロッパの単一民族国家を日本と比較すること。

今年の9月にニュースで知った、ハンガリーの外国人比率がわずか1.5%という数字を直に感じたくて中欧周遊旅行の1国目はハンガリーを訪れました。

この1.5%という数字。ハンガリーは欧州連合に加盟している周囲の国と比較しても外国人比率が顕著に低く、自分が住んでいるフランスの6.6%、ドイツの9.3%、オーストリアの13.2%と比べてもその差が大きいことが分かります。

さらにこの「外国人比率」という数字は対象国に住む外国人の割合を表しただけなので、フランスやドイツのような移民出身者の帰化を進める国の海外出身者割合はこの数字以上に高くなります。実際ドイツでは移住の背景を持つ人の割合を含めると海外出身者の割合は19.3%にまで昇るそう。

ドイツ全人口は8,170万人(2010年)で、前年から18万9,000人減少した一方で、「移住の背景を持つ人(外国人および移住の背景を持つドイツ人)」の割合は、19.2%から19.3%へと増加し、総数では1,570万人に達した。

主要国の外国人労働者受入れ動向:ドイツより引用

  • ドイツ・フランス:移民受け入れ数は多いが既に帰化しているor二重国籍を取得している人が多い¹ため、定義上の外国人比率は低い。移民出身者は多い。
  • ハンガリー:移民をほとんど受け入れていないので外国人比率も移民出身者数も低い/少ない。(2011年の国籍法改正により変化。詳しくは次の項で)

※¹:2015年、フランスでの帰化数は8万人を超えた。

En 2015, 86 608 personnes ont pris la nationalité, 25 044 par mariage (+ 27 %) et 61 564 (+ 6,9 %) par décret.

Régularisations, demandes d’asile, visas : les chiffres de l’immigration en 2015より引用

2015年、86,608人がフランスに帰化。そのうち25,044人(前年比+27%)が結婚による帰化、61,564人(前年比+6.9%)が政令による帰化。

移民を受け入れない政策の転換点

ただ、これまで移民受け入れに消極的だったハンガリーも長年続く労働力不足と経済停滞を解消するため2010年に新しい国籍法を可決して、周辺国からの人口流入を図りました。

  • 経済悪化で人口流出、経済停滞
  • 経済立て直しのためにUターン、周辺国民の流入を画策
  • 海外出身者の人口割合が微増

Hungary has been giving some grief to its neighbors with a new law that allows people to claim Hungarian citizenship if they have (a) a direct ancestor who was a Hungarian citizen and (b) a basic knowledge of the Hungarian language. Apparently the latter requirement is being leniently interpreted.

And all shall have passportsより引用

ハンガリーが制定した新法は(a)直系の祖先がハンガリーの市民権を持っている、(b)ハンガリー語の基礎的な知識を有している者にハンガリー国籍を取得できるようにしているが、2つ目の要件はどうも甘く見え、周辺国の反発を生んでいる。

流出した人口を再びハンガリーにUターンさせるため、二重国籍を認め、ハンガリー国籍の取得を容易にした政策のようです。

Till August 2015, more than 750,000 applications were filed and 700,000 people were already granted citizenship thanks to the new nationality law.

Hungarian nationality lawより引用

2015年8月までに75万を超える申請があり、新たな国籍法により70万人以上が既に市民権を得ている。

この新国籍法により周辺国からの流入はあったものの、受け入れるのはあくまでかつてのハンガリー系住民で、中東からの移民を受け入れている他の国とは移民受け入れの方針が異なっているのが分かります。

なぜ移民受け入れに消極的なのか

ではなぜハンガリーが移民受け入れに消極的なのか。その謎に迫ったのがフランスのメディア、フランスアンフォの特集で、僕が現地に現地に向かうきっかけとなったのはこのビデオです。

Hongrie : pourquoi refuse-t-elle les migrants ?「ハンガリー:なぜ移民を拒むのか」

動画冒頭の「なぜ移民受け入れに反対なのか」待ちゆく人に聞いてみたインタビューの回答を日本語にしてみると、

  • おばあちゃん1「ハンガリーは小さい国だから、そんなに移民を受け入れられないの。」
  • おばあちゃん2「自分と違った文化を持った外国人と暮らすのが嫌なの。私はハンガリー人だし、そのままであってほしいの。」
  • お兄さん「彼らには足を踏み入れてほしくないね。やつらはテロリストで人間じゃない。もともといたところに留まっていてほしい。」

といった感じでフランスアンフォからは「外国人嫌い」とレッテルを貼られる始末です。実際フランスのメディアが街ゆく人にインタビューした中から「外国人嫌い」の人を作為的に選んだ/放送したことは想像に容易いですが、リベラルとグローバルの波が流れるヨーロッパの中心でこうした保守的な国も珍しいと思い、実際に現地へ向かったのです。

実際に街に出てみると

街中の様子
街中の様子

白人だけでなくアフリカ系や中東系、アジア系出身のコミュニティーが混在するパリで暮らしている²自分からすると異様な光景に出会いました。大通りや小道を歩いても、市内のメトロの車内を見渡しても周りにいるのは白人だけ。

※²:特に僕が暮らす13区にはフランス最大の中国系、ベトナム系コミュニティーがあるので通りによってはアジアにいるような感覚。中心街に近い距離にもこうした地区がある。

駅構内にルーマニア系のホームレスがいたり、かつてのユダヤ人街はたしかにありました。ただ中心街に移民出身者のコミュニティーがある気配はしません。

ケバブ店で異文化の匂いを感じる

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ケバブ屋さんのお兄さん。食材を撮ろうとしたらピースしてくれた。

ただ一箇所だけ移民出身のコミュニティーの匂いを感じる場所がありました。それがブダペスト市内でもっとも頻繁に見かけるストリートフードのケバブとギロスの店舗です。

ヨーロッパではどの都市にもケバブ料理店がありますが、そのほとんどはトルコ系移民出身の人によって経営されています。

スキルやコネの無い外国人が移民受け入れ体制の整っていない国で暮らすには参入障壁が低い自営業の屋台店舗から始めることが多いと社会階層論の講義で習った³のですが、まさにその通りで、数少ないブダペストに暮らす移民出身者はこうした仕事を行なっているのでしょう。

※³:日本だと横浜の中華街、新大久保の韓国料理、西葛西のインド料理、蕨のケバブ料理店、フランスだと、13区の中華街、10区のインド・パキスタン通りパッサージュ・ブラディ、冬になるとパリ市内の地下鉄出口や観光地に出現する焼き栗売りなど。

ハンガリーは日本と似ている?

日本→フランス→ハンガリーと移動したので、単一民族国家→複数民族国家→単一民族国家の順に体験したことになるのですがハンガリーと日本は統計上、類似点があるものの地理的要因で全く違った状況に立っています。

「移民受け入れに反対」と声を上げないとその波に飲まれてしまうハンガリーと、地理的に距離の離れた日本とでは国民の持つ移民に対する感情も違うでしょう。ハンガリーの方がより緊迫した状況にあるのは間違いありません。

ということは、もし将来的に日本に周辺アジア諸国からの移民受け入れ案が上がった場合に起こりうるのは、今既に移民の波が国境線まで近づいている現在のハンガリーの状況(人々の反応や政策)で、ハンガリーの移民政策とそれに対する周辺国の圧力に注目するのが日本で生活する僕たちの今するべきことではないのかと考えます。

 

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