パリのアジア系いじめ:アフリカ系・中東系移民によるアジア系マイノリティー差別

2017年07月21日      2017年07月25日
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この記事は筆者がフランス・パリに留学をしていた時期に体験した内容です。現在は日本に帰国しています。

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マイノリティーの移民出身者を差別するなんて酷い話だ」とよく耳にしますが、実際にパリで生活している日本人の筆者からするとマイノリティーである彼らの方から差別を受けることばかりで現実は本に書かれていることやネットの記事とは違います。

例えば道を歩く時、もしくは公園のベンチに座っている時。ただそこにいるだけで、差別的な態度を取ってくる人々がパリには少なからずいるのですが、そのほとんど(というより私の経験した限りでは全員)が北アフリカ系、中東系移民出身者、もしくは彼らの二世、三世と思われる風貌の人々なのです。

※¹:誤解を生まないように、移民出身者すべてが悪いわけではないことを最初に書いておきます。ここで問題なのは移民出身のバックグラウンドを抱えている中の一部。アジア系に対してのみ差別的な態度を取る人々についてです。

この記事で私が話していく内容は、こうしたパリにおけるマイノリティーによるマイノリティー差別の実情です。個人的に、マジョリティー側からマイノリティーに対する差別が大きな話題になっているのに対して、マイノリティーである彼らがさらに数の少ないアジア系をパリで差別している事実が表に出てこない点がおかしいと思っていて、当事者として、こうした現状もあるよという一面を発信できればと思います。

最初に:観光地としてのパリとは違うパリ

パリではアジア系移民出身者が北アフリカ系・中東系移民出身者によって差別されている。

この事実は短期でパリに旅行した人やビジネスで都心部を訪れただけの人にはあまり実感の湧かないことかもしれません。さらに言うなら留学生や在住者でも、パリの中心部から離れたこうした地域に足を頻繁に運ばない限りこの差別に出会うことは少ないでしょう。

というのも山手線の内側と同程度の面積しかない小さな街パリには観光地や学校が集中する中心部と全く気質の異なる地域が存在するからです。こうした地域もれっきとしたパリなのですが、パリの中心部から離れた周縁部はいわゆる私たちが想像するパリとは異なるパリなのです。

この前提に立った上で、まずはパリ市の危険地区と呼ばれる18区、19区、20区で私がこれまで体験してきたマイノリティー集団による差別について、その内容を話したのち、考えられる差別の原因、個人の所感を書いていきます。

声かけ・絡まれは日常的な地域

パリ政治学院で都市政策の講義をメインに受講していること、貧富の差による居住地の分離、セグリゲーション、ジェントリフィケーションあたりを研究テーマにしていることから、パリ市内でも貧困地区や危険地区と呼ばれるエリアに足を運ぶことが多くあります。

特によく行くのは18区や19区、20区のようなパリの北東地区で、こうした場所に向かう時にはスリや強盗の恐れがあるため、必要最低限の荷物と体を大きく見せるために厚着をして、イヤホンを耳にして音楽を聴くふりをしながら彼らに絡まれないように移動するのですが、こちらがただ道を歩いていたり、公園のベンチに腰掛けているだけなのに、これまで様々な差別的行為を経験してきました。

声かけから始まり唾吐き、集団いじめ

これまで経験した差別的だと感じる、彼らの行動の一部をあげると、

  • 声かけや暴言を吐かれる
  • 集団で道を塞ぐ
  • 足元に唾をかけられる

この三つが特に多い行為です。声かけに関しては観光地での客引きとは様相が違い、「你好」と言いながらこちらに接近してくる行為を指します。暴言はアラビア語と思われる、こちらが理解できない言語での罵倒です。彼らのタチの悪いところは常に集団で固まっていて、一人で行動することの多い私をニヤニヤ笑いながら、時には睨みながら言葉を吐いてくるところです。

集団での道塞ぎは正面から向かってくる集団が私の歩こうとする道を意図的に塞いできて肩当てや接触、うまくいけばスリを行おうとする手法で、三番目の唾吐きに関しては、なんの前触れもなく足元に唾を吐きかけてきます。

こうした行為に共通しているのは、彼らが楽しんでこうした行為をしていることです。彼らの中では自分たちのテリトリーに、のこのこと小さなアジア人がやってきたからからかってやろうという魂胆なのでしょう。

ただ、こうした行為が及ぶのは私がアジア系だからでしょうか。こうした地域に足を運ぶたびにこうした歓迎を受けるのは私がアジア系だからなのか、それとも白人系の人々も同じように差別を受けているのか。この点はこの記事を進めて行く上で押さえておくべき内容になるはずです。

差別されるのはアジア系に限った話なのか

結論から言うと、アジア系に限らずマイノリティーである外見を持つ者は差別対象になりやすい傾向があります。次のビデオを見てみてください。この動画はユダヤ教の民族衣装であるキッパを頭につけ街中を歩いていた際の周囲からの反応を録画した動画です。

私が受けているのとまさに同じように、録画された男性は暴言や唾吐きを周囲から浴びせられながら街を歩いています。

この動画を見るとわかるように、異なるコミュニティーに属していると分かるやいなや差別対象になり、白人であっても彼らにとって差別対象であるとみなされた場合には人種は関係なしに差別を受けるのです。

とは言っても、私はアジア系が差別対象になる機会が非常に多いと感じています。

なぜアジア系が差別されるのか

なぜアジア系が北アフリカ系、中東系移民出身者から差別されるのか。その大きな要因は下記の二点ではないかと考えています。

  • コミュニティー間の対立
  • 体格と言語の壁

コミュニティー間の対立

パリにはアジア系、北アフリカ系、中東系のような出身地による区分に限らずユダヤ教、バイセクシャルなどマイノリティーによって構成されるコミュニティーが無数に存在します。

そして彼らの間ではある程度テリトリーが決まっており、中国系やベトナム系を始めとするアジア系は13区、ユダヤ教徒は19区、バイセクシャルはマレ地区周辺のように、それぞれが異なる生活圏を持っていて、これらのコミュニティーはそれぞれ干渉せず独立していたのです。

問題が起き始めたのはアジア系移民の増加により北アフリカ系や中東系コミュニティーと同じ地域に生活圏が重なるようになってから。言語・文化的差異により両者の間に溝ができてしまったのです。

そう考えると私が若い黒人の集団に絡まれた18区のエオル公園は彼らにとってのテリトリーだと考えることができ、そこを害されて気分の悪くなった彼らはちょっとした動作でも癪に触り、その結果として絡んできたのでしょう。

体格と言語の壁

アジア系がターゲットとされるもう一つの理由が体格と言語の壁です。窃盗や傷害事件は以前から多くありますが、ここ最近でも2016年に中国系女性が不良集団に襲われ殺害された事件があり、その後パリ市内でも大規模なデモが起こりました。

“Dans la communauté asiatique, on est ciblés car on est des proies faciles : on a des petites carrures et puis on est discrets, on ne porte souvent pas plainte, alors il n’y a pas de retombées”, analyse Le Xu.

「アジア系コミュニティーの中で、我々は格好の餌食になっています。体格も小さく控えめな上、(言語の問題から)警察に訴えることも多くないため、影響がないのです」とLe Xuさんは話す。

アジア系コミュニティーに属するマイノリティーは体格が比較的小さいこと、そしてフランス語を話せる人も多くないので言語の壁も影響して不利な立場に立たされています。それを利用しているのがその地域にはびこる不良集団なのです。

アジア系出身者は本当に大変だと思う

ただの留学生で、1年もすればこの地域から離れられるので私はまだ我慢できます。それでもこの状況とそれを報じないメディアはどうかと思いますが。

ただパリに暮らしている中国、カンボジア、ラオスなどアジア系移民出身者の中には経済的・社会的理由からそこを出られない人もいます。彼ら・彼女らは常にそうした脅威を身近に感じながら生きているのです。

ビクビクしながら生きる街には住めない

そして私はパリでは暮らせないでしょう。外を歩いている時に襲われる危険性があるからです。そんなビクビクしながら過ごすような街では生きていけません。そう思うと同時に自分が育った埼玉と東京の安全さを改めて実感します。

今、私が暮らしている家の近くには低所得者層向けの団地があります。この記事を書きながら、滞在当初、そのエリアにカメラを首から下げて通った時、そこにいたアフリカ系移民の背景を持つであろう若者たちに暴言を吐かれながら威嚇されたのを思い出しました。

残り留学期間は4ヶ月。事件に巻き込まれないように注意を払いながらこうした地区を訪れてリアルな状況を今後も提供していきます。

(追記)

その後、無事に帰国しました。

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