欧州のスポーツ事情:サッカー・バスケが人気で野球人気がない理由

2017年03月21日      2017年04月06日
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スポーツが社会に浸透する条件として知られている歴史的背景。例えば野球大国アメリカの文化的影響が強かった中南米地域では野球が浸透し、ヨーロッパとその旧植民地国ではイギリス発祥とされるサッカーが広まっているのには、この歴史的背景が大きく関わっています。

ただ、もちろん場所ごとに人気スポーツに違いが出るのはこうした歴史的背景が理由の一つとしてはあるものの、留学生としてフランスに滞在し、数十カ所の欧州都市を周ってきた身として思うのは、人気スポーツが地域によって異なるのには歴史的理由の他にも、

  • 金銭的理由
  • 地理的理由

があるということです。このページでは人気スポーツの場所による違いを上の2点に絞って、自分がこれまでヨーロッパの街で撮ってきた写真を見せながら話していきます。

なおこのページの内容はあくまで個人の経験によるもので統計資料を扱ったものではありません。ただ、内容に関しては実際に自分の目で見てきたことなので現実に近いことは確かです。

もう一点、読み進める前に頭に入れておいてもらいたいのが、これから人気スポーツの違いの例として、3つのスポーツ、

  • 野球
  • サッカー
  • バスケットボール

を例に出しますが、バスケは欧州よりもアメリカの方が人気ではないかと指摘されるかもしれないので、最初に注記しておきます。ここで話していくスポーツの人気度合いはプロリーグの有名度というよりも、市民レベルの取り組み具合にフォーカスしていて、実際に街を歩いてみてどのスポーツを余暇活動として楽しんでいるかを見た結果です。

それではなぜヨーロッパでサッカー・バスケ人気が高く、野球人気がそれほどではないのかを見ていきましょう。

高架線下のバスケットコート

サッカー・バスケと野球の違い

サッカー・バスケットボールと野球を比較するときに大きな違いとなるのが、プレイ時に利用する道具の数です。サポーターのような補助具、ゴールキーパーのような特殊ポジションの選手がつけるプロテクターを除くと、サッカー・バスケットボールはボール一つで済むのに対して、野球の場合、ボール複数個、バット、グローブ、ベース等、必要となる道具の数が多いことがわかります。

  • サッカー・バスケ:ボール一つ
  • 野球:ボール複数個、バット、グローブ、ベース等

ボール一つでできるということはすなわち参加へのハードルが低いことを意味し、例えば参加者が10人いたとして各人が道具を持ち寄る必要はなく、コートを探してボールを一つ持ってくれば済むのがサッカー・バスケの特徴です。

これが野球だった場合、各々が道具を持って集まらないとゲームが成立しないのでサッカー・バスケには道具が少なくて済むメリットがあるのです。

  • ボール一つでプレイできるサッカー・バスケ
  • 各人が道具を持ち寄る野球

一度に遊べる人数の柔軟性とルールの簡潔さ

道具が少なくて済むことに加えて、サッカー・バスケは野球と比べて人数制限が緩く、少人数からある程度の人数まで一度に遊ぶことができます。

その上サッカーとバスケがこれほど広まっているもう一つの理由がルールの簡潔さです。野球のようにカウントが存在せず、相手の陣地に攻め込みボールをシュートするシンプルさは参入障壁が低く、初めてでも気負いせずプレイに参加できます。

もちろんオフサイド、スリーポイント、ダブルドリブル等、これらにもルールはありますが、野球と比べた時の理解しやすさは断然サッカー・バスケに軍配があがるでしょう。

ここまで見てきたことをまとめると、サッカー・バスケはまず次の3点で野球と比べてメリットがあると言えます。

  • 道具が少なくて済む
  • 少人数から大人数まで遊べる
  • ルールが簡潔で参加しやすい

金銭的理由

このメリットをサッカー・バスケが広まったヨーロッパないしはアフリカで暮らす人々の懐事情と照らし合わせてみると、これらのスポーツ(サッカー・バスケ)が欧州において金銭的理由も絡んで広まったことが分かります。

ヨーロッパ≠裕福

まず、ヨーロッパと聞くとテレビや雑誌の影響からおしゃれな人々が優雅に生活しているシーンを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、それは大きな誤解です。

私たちが想像するような、いわゆる”ヨーロッパ人”は一部の中流層以上の人々だけのイメージで、実際には多くの金銭的に裕福ではない人々も同時に存在しています。

こうした金銭的に豊かではない人々が余暇を過ごす方法は何か。それが金銭的コストがかからずに大人数で遊べる、ルールが簡潔なスポーツ(サッカー・バスケ)なのです。

  • サッカー・バスケがヨーロッパで人気な理由の一つは、金銭的コストがかからないこと

詳しくは次の記事で触れていますが、ヨーロッパのあまり裕福ではない人々が暮らす地域にはサッカー・バスケ用のコートが多く設置されている傾向があり、その理由の一つは、表立って語られることは少ないですが、こうした人々のストレスを解消させ、恐喝やスリ、強盗など反社会的活動に走らせないようにする狙いがあります。

サッカー・バスケのスポーツ人口が多いのはこうした世間のマジョリティーを占める金銭的に裕福ではない層までを取り込めているから実現できる結果なのでしょう。

そして、この観点からいくと、フランスやドイツをはじめとした移民政策に積極的なヨーロッパ諸国ではサッカー・バスケのスポーツ人口は今後も間違いなく伸びていくはずです。

地理的理由

プラハの市街地

サッカー・バスケが流行り、野球人気がないもう一つの理由はヨーロッパ型都市の構造にあります。地続きであった欧州都市は歴史上、都市同士、国同士で幾度とない戦争を経験し、航空技術(空からの攻撃)が発達するまでの間、外敵からの侵略を防ぐために各都市の周囲には壁が建設されていました。

フランスの首都、パリはその好例で今となっては周囲を取り巻く壁は撤去されたものの、その跡を現在は環状道路が走っています。Google Mapsで見るとその姿がよく分かります。

こうした城塞都市と呼ばれる、周囲を壁に囲まれた都市が往々にして抱える問題は土地不足です。ヨーロッパの街を歩くとわかりますが、都会の中で開けた土地というと大公園やかつての邸宅、一部の高級住宅地ぐらいしか十分なスペースがなく、日本に比べて土地の利用度が高いのが現状です。

こうした町の中に野球場のような広いスペースを作るのは至難の技で、土地利用の観点から考えてこうしたグラウンドは都市内に整備されないため、野球場は作られないのです。

  • 大きな場所が必要な野球は面積の限られる欧州の都市内ではプレイできない
パリ18区のバスケットコート

大きな場所が必要となる野球に比べてサッカーやバスケはどうでしょうか。これはヨーロッパを歩いているとよく見かける光景ですが、小学生ぐらいの少年が何人かでちょっとした広場や家の前でサッカーのパス練習をしたり、電車の高架下にできたスペースを利用して高校生ぐらいの若者がバスケをしているのが一般的で、サッカーとバスケが場所を取らない省スペースなスポーツだということが分かります。

野球がヨーロッパで流行らない理由

こうしてみると複数の道具とルールへの理解、充分なスペースを必要とする野球がヨーロッパで流行らない理由が見えてきます。

結論としては、ここで紹介した金銭的、地理的理由に冒頭で触れた歴史的理由を足した次の3つの要因がスポーツ人気には大いに影響していることは間違いなく、これからも、少なくとも市民の余暇活動レベルとして野球がヨーロッパで一般的になる日は来ないだろうと考えています。

  • 歴史的理由
  • 金銭的理由
  • 地理的理由

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